日本語・国際教育研究紀要 = Journal of Japanese language and international education studies;第27号

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多文化の話し合いの「個人の経験を共有する活動」で目指される相互理解とは? : 感情に焦点を当てる仕掛けの効果をめぐって

杜, 長俊

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/92236
KEYWORDS : 相互理解;個人の経験;多文化の話し合い;話し合いの仕掛け;会話分析

Abstract

国籍や文化が異なる人々がお互いのことを理解し認め合うことは、多文化共生社会の実現において必要不可欠だとされているが、多文化・異文化の人々が出会う様々な場面において参加者たちがどのようなプロセスで相互理解を目指すかに関する実情は十分に解明されていない。本論文では、多文化ワークショップ(「みんなでつくる多文化えんげきワークショップin EBETSU」)に参加する住民たちが、演劇を通して自分の経験を想起しその経験を他者と共有する活動の中で、住民たちがどのような水準の相互理解を目指すことができるのかを、会話分析の手法を用いて記述・分析を試みた。特に、ワークショップの運営側が用意する「感情に焦点を当てる2つの仕掛け」を、参加者がどのように利用し、相手の経験を受け止めるのかを中心に分析を行った。その結果、1つ目の「感情カード」という仕掛けにおいては、相手が話した個人の経験と、相手が提示した感情カードの結びつきは自分にとって理解・想像可能であることを示す行動、2つ目の「統一した感情を付箋に書く」という仕掛けにおいては、相手が付箋に書いた状況を想像しながら、相手の感情を自分の言葉で言語化する行動を通して、相互理解の達成が目指されていることが分かった。

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